エックス線の発生原理
エックス線発生のメカニズムは単純です。
電子をものすごい早さに加速して金属にぶつけるだけ。
これだけでエックス線が出ます。
電子と陽極ターゲットの衝突パターンは2つあります。
発生パターン1
電子が原子核の近くを通過しようとするときに、電子は強い電気力によってその速度を抑えられます。
その際に失われた運動エネルギーが制動エックス線として放出されます。
発生パターン2
電子がターゲット物質を構成する原子の軌道電子を弾き飛ばすと、そこに空席ができます。
空席に外殻起動から電子が遷移した際に、エネルギー準位差が特性エックス線となって放出されます。
では、具体的にエックス線管でエックス線が放射されるまでの流れを見ていきましょう。
まず、エックス線管を高真空状態にして、陰極フィラメントから電子を放出させます。
飛び出した電子は、数十[kV]以上の高い電圧を受けて陽極ターゲットに向かっていきます。
そして電子と陽極ターゲットが衝突するとエックス線が発生します。
エックス線管は、使用時間に応じて、だんだんX線が弱くなっていきます。
これは、フィラメントが劣化して電子のエミッションが弱くなるためです。
最後には、フィラメントが切れてX線が全く出なくなります。
白熱電球のフィラメントの同じイメージです。
実焦点は本当の焦点。実効焦点は見かけの焦点。
エックス線の出力は、管電圧[kV]×管電流[mA]で制御します。
電子1個あたりの運動エネルギーを大きくしたいのであれば、管電圧を大きくします。
電子の量を多くしたいのであれば、管電流を大きくします。
管電圧=UP、管電流=一定
エックス線強度は大きくなり、ピーク波長と最短波長は低波長側に移動します。
線質が硬くなるので、透過力が上がります。
管電圧=一定、管電流=UP
エックス線強度は大きくなりますが、ピーク波長と最短波長は変わりません。
なので、線質を変えずに透過力を上げたい時は、管電流を上げます。
樹脂など透過しやすい物質を見る時は、管電圧を下げるとコントラストを持った画像を撮影することができます。
反対に、金属など透過しにくい物質を見る時は、出力=管電圧×管電流を大きくします。
スペクトルで見たように、エックス線は、波長が長いものから短いものまで含まれています。
最短波長は、簡単な計算式で求めることができます。
最短波長λ[nm]、管電圧V[kV]として、
最短波長は、管電圧だけによってきまります。
この式から、管電圧を大きくすると、波長が短くなって透過力が強くなることがわかりますね。
エックス線管強度と管電圧・管電流・ターゲット材の間には関係式があります。
- エックス線強度 I は、管電圧 V の2乗に比例する。
- エックス線強度 I は、管電流 i に比例する。
- エックス線強度 I は、ターゲット材の原子番号 Z に比例する。
以上を式で表すと、下のようになります。(Kは定数)
ただし、ターゲット材は、原子番号が大きければなんでもいいわけではありません。
実際にエックス線になるのはたったの1〜3%で、
衝突した電子の運動エネルギーの多くは熱に変換されてしまいます。
なので、ターゲットは、耐熱性が強い材質でないといけません。
融点が高く、硬くて重いタングステンやモリブデンが使われます。
タングステンは高融点ですが、さすがに熱を逃がさないと熱損傷するので
タングステンターゲットの周りを熱伝導性の高い銅などで囲んで空冷させます。
(画像出典元 : wikipedia)
ちなみに、ターゲットに使われる、タングステンやモリブデンはレアメタルの1つです。
日本は輸入に頼ってます。
レアメタル素材の輸入が止まると、国内で高性能なX線発生器を作ることができなくなってしまいます。